気になる作家  ま行

気になる作家 ま行 



松本清張 

「黒革の手帖」「黒い画集」「けものみち」「わるいやつら」

 くだんの親友とはドラマの話がらみで必ず話題にのぼる清張作品。社会派とも言われるが、どろどろした人間の感情や関係を描き、真実をあぶり出していく。
 時代背景はあくまでも何十年も前のことなのに、書かれていることは常に新しい。ミステリーだが、事件の謎解きというよりは、人間の追求、人間の心のミステリーを解いていくものである。
 そして私がひきつけられる魅力はもうひとつ、作品を読んでいると、生意気な言い方のなるがこの人は女性のことを決してあなどったり、男の都合よく考えない、むしろ、女性の底力やおそろしさをじゅうぶん認識していると思われるところだ。
 2時間ドラマ・映画など、同じ作品も何度も作られているが、映像化されたいろんな作品を見ていきたい!


三浦綾子  
 「氷点」「続・氷点」「塩狩峠」「自我の構図」

 中学生の頃、「氷点」をテスト前に一気読みした。ヒロイン陽子はひたむきで聡明な女性で今ならちょっとつまらなく思いそうだが、当時は吸い込まれた。
 人間の原罪がテーマである。他の作品も人間がいかに生くべきかを追求している。キリスト教精神が底流にある。若い頃はもっと真剣に受け止めていたはずだが…明るく前向きな感じが苦手で最近は読んでいない。


宮部みゆき 

 「地下街の雨」「火車」「クロスファイア」「鳩笛草」

 人間捨てたものではない、救いあえる、思いあえる…とぬくもりと希望を与えられる反面、人間の救いようのない非情さ・冷酷さが徹底的に描かれることもあってやるせない。
 それにしても膨大な作品を構成するこの人の頭の中はどうなっているのかと思う。天才で大物だ。
 ミステリーも斬新で、トリックなど秀逸である。私は初期の短編が大好きだ。
 それからこの人、プライバシーをさらけださないさらっとしたところが大好き!

三島由紀夫  

「仮面の告白」「金閣寺」「豊饒の海」「愛の渇き」「潮騒」「青の時代」「近代能楽集」

 思想的なことはほとんどわからない。生まれも育ちも庶民とは違い、才能も天才的だったのだろう。だけど私、作品を読むとこの人の声が聞こえてくるというのか…おこがましいが、どこか自分にあい通じるものを感じ、「仮面の告白」などは何度も読んだ。
 太宰治に面と向かって、あなたの書く弱い文学はきらいと言い、強いことが美しいに決まっていると公言したのは、自分の弱さや限界やコンプレックスを認識していたからではないか。
 男の人しか愛せなかったともいわれるが、女性についても真の美しさがわかる人だと思わせる表現に出会い、感動したこともある。なぜか優しい人であるような気がする。

宮本輝 

 「青が散る」「泥の河」「道頓堀川」「春の夢」「オレンジの壷」「錦繍」

 生や死、人間の生き方、人生とは…とストレートに根源的な問いかけをするが、どろどろしそうなのにさわやかさやひたむきさが感じられ、人生を前向きにとらえられそうな作品が好きだ。青春をとらえたものも、せつないがまさに若さや夢を感じて好き!「青が散る」の祐子の描き方が私には絶品だ。


向田邦子

   「冬の運動会」「幸福」「父の詫び状」「向田邦子・映画の手帖」「阿修羅のごとく」「思い出トランプ」
 
 さっぱり、さばさば、どこかのんびりユーモアがあるが、落ち着いていて冷静な感じの人だ。
 自分の生まれ育った家族の原風景が根底にあって、家族のかたち、人間関係、さまざまな愛のすがたを映し出していく。家族とは?の問いかけもあるようで擬似家族の試みもある脚本もあって常に新しさを感じる。
 若いときのスポーツ万能で活発な編集者時代の写真はとても可愛らしく魅力的!ファッションにも敏感で服や帽子も手作りだったらしい。写真満載の本などはおしゃれのテキストだ。今の時代でもそのまま飛び出してこられそう!食べることや料理もお好きだったそうで、料理の記述や本もおもしろい。


森瑶子  

「女ざかりの痛み」「デザートはあなた」「叫ぶ私」「夜の長い叫び」

 都会的で洗練されている。まばゆいばかりの経歴だと思うのに、母に愛された実感に乏しく、それをトラウマに持ち、芸大でも才能の限界を知り、バイオリンを辞めたとのこと。
 エッセイでは恋愛・結婚・仕事・自己・男女の関係…などについて、だれもが感じる悩みや思いをべたべたせず、からりと描ききっている。
 30代の半ばに真の自立にめざめ、執筆し始めたのも印象的である。


 
森村誠一

 「魔少年」「青の魔性」「悪魔の飽食」

 人間の本質的な欲望や魔性をあぶりだした作品が多い。高度経済成長時の狂気のようなものも背景になっているかもしれない。現代人の悲哀のようなものも感じてしまう。生々しくどろどろした描写が克明だ。


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